保育士はよりよい社会の未来をつくる重要な存在
乳幼児期の豊かな育ちがひとりひとりのWell-Beingにつながる
「子育て中のママやパパ、子どもに関わる全ての人に向けてよいものを発信していきたい」という想いからKIDSNA STYLEのコンテンツやサービスを提供しています。現場で専門家として日々働く保育士の専門性と社会的存在意義について保育業界の第一人者である玉川大学教育学部・教授 大豆生田 啓友先生にお話を伺いました。
大豆生田 啓友
【経歴】
青山学院大学大学院文学研究科教育学専攻修了後、青山学院幼稚園教諭等を経て、現職。
【社会的活動】
日本保育学会理事、日本こども環境学会理事、こども家庭庁「こども家庭審議会」委員および「幼児期までのこどもの育ち部会」委員(部会長代理)、文部科学省「幼保小の接続期の教育の質的向上に関する検討チーム」委員(2023年3月まで)、厚生労働省「保育所等における保育の質の確保と向上に関する検討会」委員(座長代理、2021年3月まで)、よこはま☆保育・教育宣言運用協議会委員、yahoo japan公式コメンテーター、 NHK・Eテレ「すくすく子育て」出演、テレビ静岡「テレビ寺子屋」出演、等
保育士の3つの専門性について
日々、現場で子どもと接する保育士は、どのような専門性やスキルを持っているのでしょうか。国家資格である保育士資格の取得は、医療福祉分野に比べても難易度が高いといわれています。
そんな保育士の専門性について、玉川大学教育学部・教授 大豆生田 啓友先生(以下、大豆生田先生)にわかりやすく教えていただきました。
―保育士の専門性① 「子ども理解」のプロ
大豆生田先生
保育士は誰よりも個々の子どもを子どもの側に立って理解しようとします。
子どもが落ち着かない、噛み付くなどの困った行為があったとき、保育士は、そうせざるを得なかった子どもの立場や状況、意味を考えます。そして、それを理解しようとしながら、受容的なかかわりを行います。そして、その行為の意味を保護者に伝えようとします。
このような保育士の存在は、子どもの発達や成長にとって最も重要な「心の安心・安全」につながります。
―保育士の専門性② 子どもの「豊かな育ち」をサポート
大豆生田先生
保育士は保育園で子どもを安全に預かるだけでなく、「遊び」を通して豊かな「学び」を提供します。工作、ままごと、砂遊び、絵本……それぞれの子どもの興味・関心に応じてひとつの遊びに熱中させ、他の子との関わりを取り持つことで、より豊かな遊びの環境を提供します。
豊かな遊びによって充実した「今日」は、子どもにとって明日への希望になります。
このような豊かな育ちの循環について、保育士は保護者に説明をすることができます。
―保育士の専門性③ 保護者の心強い味方
大豆生田先生
保育士は保護者との関係も重要視しています。日々、子育てする中でさまざまな思いや悩みを抱えている保護者に向けて、成長する子どもの姿をきちんと伝えます。
保育士は、一緒に子育てをしていくというスタンスで、保護者が子育てに意欲を持てるような支援を行います。
保育と社会の関わりが未来を変える
保育士という職業の専門性を踏まえ、保育士や保育の社会的存在意義について大豆生田先生に語っていただきました。
大豆生田先生
まず、保育士は社会の未来をつくる重要な仕事をしているという共通認識が必要ではないでしょうか。
ひとりの子どもが乳幼児期に毎日を幸せに生きることは、その子の未来のWell-Being(本質的に幸福で充足した状態)につながります。これが社会全体のよりよい未来をつくっていきます。保育士はそれほど重要な仕事をしています。
近年、保育園により多くの役割が求められるようになりました。そんな状況で、園の中で保育を完結させるのではなく、地元の商店街や近隣の農家、地域住民との関わりによる「開かれた園づくり」進める保育園も徐々に増えています。
本来、共同保育は人間の子育ての特長でした。最近、子育てが大変という風潮になってしまったのは、それがなくなりつつあるからではないでしょうか。子どもは、保護者だけ、保育園だけではなく、社会全体でさまざまな人との関わりの中で育てられるべきです。
そのためには、社会全体で保育の重要さを理解し、保育士の専門性と社会的存在意義を認識した上で、保育の在り方を改めて考えていく必要があると思います。